最も有名なことわざと言っても過言ではない「猿も木から落ちる」という表現ですが、その正しい意味はご存じでしょうか?
実はこのことわざ、正確な意味は把握していても、使う状況を間違えている方も意外と多い、要注意の言葉なんです。
また、世界各国に類似の比喩表現があるのですが、猿とは違う動物が使われていたりして、それを知るのもまた面白いんですよね。
ということで今回は、例文・類語なども参考にしつつ、「猿も木から落ちる」の意味を詳しく&分かりやすく解説致します!
猿も木から落ちるの意味
それでは早速、「猿も木から落ちる」の意味を見ていきましょう。
「猿も木から落ちる」の意味とは、「その道に優れた者でも、時には失敗することがある」という意味になります。
これは読んで字のごとく、「木登りが上手な猿でも時には木から落ちることがある」という、たとえから来ている比喩表現ですね。
言い換えれば、初心者や経験が浅い人がミスをするのは当然ですが、そうでない優秀な人でも間違えることがあるということを表しています。
つまり、プロや上級者と言われる人や、その分野での経験が長かったり、得意なジャンルで活躍している人でも、ときにはミスをすることがある、ということですね。
他の動物でたとえるなら、犬でも匂いを嗅ぎ間違えることもあるし、馬でも走っている最中にコケることもあるよね、という感じでしょうか。
あるいは、誰でも知っている有名人を例にすれば、イチローでも全打席三振で終わることもあるし、明石家さんまでも誰もフォローできない程スベることがある、ということです(笑)
したがって、「猿も木から落ちる」という表現を使うシーンとしては、「あの人がミスするなんて!」という「驚き」という心情とともに使用することが多いです。
あるいは、いわゆる完璧主義に対する忠告や、決して油断してはいけないという注意喚起のような意味合いで用いるケースもあります。
また、その一方で失敗した人を慰めたり励ましたりするときにも、このことわざを使用することがあります。
つまり、「優秀な人でも失敗する」という事実をどう捉えるかで、そのニュアンスが微妙に変わるということですね。
ちなみに、そのニュアンスの違いは、具体的な例文や会話例を見ることで理解できるので、のちほど紹介しますね。
なお、冒頭でも触れた、このことわざを使う際の注意点としては、「猿も木から落ちる」ということわざは、基本的には自分より立場が上の人に対して使う事はできないという点です。
なぜなら、「猿も木から落ちる」は、対象に当たる人を猿に例えることになり、それは当然目上の方に対しては失礼に当たるからです。
したがって、挑発目的で「猿も木から落ちる」と使う以外は、目上の方に対しては使わないようにしましょうね(笑)
さて、ということで、ここまでで「猿も木から落ちる」の意味がおおむね理解できた後は、この言葉を完全にマスターするために、続いてその語源を見てみましょう!
いったい何故、「猿」という動物が選ばれたのでしょうか?
猿も木から落ちるの語源
さて、「猿も木から落ちる」にはどのような由来があるのでしょうか?
結論から言うと、「猿も木から落ちる」ということわざの明確な由来は、実はわかっていません。
これだけ有名なことわざにも関わらず、その由来が不明なのは意外ではないでしょうか?
その理由としては、このことわざは非常にポピュラーであるがゆえに、逆に誕生した時期やきっかけなどが断言しずらいという側面があるからです。
ただし、そのような背景も踏まえた上で有力視されている説としては、紀元前二世紀ごろの中国で書かれた『淮南子(えなんじ)』という書物の中に、「猿も木から落ちる」の最初の由来が見受けられるというものです。
『淮南子』に書かれている、「猿も木から落ちる」と類似するその文章が下記になります。
『猨狖顚蹶して、木枝を失ふ』
このままでは全く意味が分からないので、紐解いていきましょう(笑)
まず、最初の二文字の『猨狖(えんゆう)』とは『テナガザル』のことを指しており、次の二文字の『顚蹶(てんけつ)』とは『つまずき倒れること』という意味です。
そして『木枝』とは『ぼくし』と読み、これは読んで字のごとく『木の枝』を意味しています。
つまり、以上を踏まえ文全体を現代語訳すると、「テナガザルが木の枝を踏み外して転落する」という意味になります。
これはまさしく、「猿も木から落ちる」そのものと言える表現ではないでしょうか。
もちろん、これもあくまで由来にまつわる一つの説なので、これが語源であると言い切る事はできないのですが、それでもこの類似性は説得力がありますよね。
なお、日本における「猿も木から落ちる」の最も古い記述は、江戸時代につくられた俳諧撰集である『鷹筑波集(たかつくばしゅう)』の中にあり、そこには、「猿も木から落るたとへの木葉かな」という文が確認されています。
つまり、日本においては、「猿も木から落ちる」は少なくとも江戸時代以前には存在したことわざということです。
いずれにしろ、「どんなに優秀でも失敗することがある」の代表例になったことは、猿にとって誇らしいのか不名誉なのかは、何とも言い難いですね(笑)
さて、ということで、「猿も木から落ちる」の語源を把握し、その意味を完全に理解できたところで、続いてはこの表現がどういった時に使われるのか、例文を見ることで言葉の使い方をマスターさせましょう!
皆さんは、どのような例文が思いつくでしょうか?
猿も木から落ちるの例文
「猿も木から落ちる」という表現は、下記の例文のような形で使う事ができます。
- 例文1.冷静な彼女が計算ミスするなんて、まさに「猿も木から落ちる」だな。
- 例文2.料理上手の母が味付けを失敗するとは、「猿も木から落ちる」の典型例だ。
- 例文3.「猿も木から落ちる」とは言うが、決断力に定評のある部長が判断を誤るとは。
- 例文4.私のモットーは「猿も木から落ちる」であり、どんな時も基礎を疎かにしない。
- 例文5.タクシー運転手の彼が交通事故を起こしたのを見て「猿も木から落ちる」を痛感した。
ことわざには、ポジティブ・ネガティブのどちらかのみの意味合いで使えるものと、両方の意味合いで使えるものがあります。
そんな中、例文をご覧いただければ分かるように、「猿も木から落ちる」という表現は、両方のニュアンスで使われることわざです。
つまり、例文1~3のように、失敗したことへの「落胆」「軽蔑」といった気持ちや「驚き」という感情を含めて用いる一方で、例文4・5のように、油断する事への注意喚起や気を抜くことへの戒めとして、前向きな気持ちで用いることもできるということです。
そういった意味では、日常で実際に使う際は後者のようなポジティブな気持ちで、このことわざを使いたいものですね(笑)
ということで、例文を見て具体的な使い方が分かったところで、続いては実際の会話例を通して、自分自身で「猿も木から落ちる」という言葉を使うイメージを養ってみましょう!
皆さんも、下記の会話例のパンダさんになりきり、〇〇の部分に入る言葉を考えてみてくださいね。
猿も木から落ちるの会話例
久しぶりに会ったパンダさんとヒツジさんが、ファミレスで話をしています。
パンダさん、今日はやけに大人しいじゃない。何か嫌なことでもあったの?
実はこの前、小学生の甥っ子と〇〇で対戦したんだけど、大敗しちゃったんだ。
え!?プロゲーマーのパンダさんが、ゲームで子供に負けたの?
そうなんだ!油断したつもりはないんだけど、「猿も木から落ちる」とはこの事だよ!
いかがでしょうか?どんな言葉が入りましたか?
この〇〇に入る言葉は、『スマブラ』『ストリートファイター』などですかね(笑)
ゲームの話題って、自分の世代がバレる典型的なネタですよね(笑)
さて、パンダさん達のやり取りを見て、「猿も木から落ちる」という表現を実際に使うイメージがついたところで、続いてはその類語を知ることで、この言葉の輪郭をより鮮明にしていきましょう!
皆さんも、パッと思いつく類語がありますよね?
猿も木から落ちるの類語
「猿も木から落ちる」には、下記のような類語が存在します。
- 1.「河童の川流れ」
「どんなに上手な人であってもたまには失敗する」という、「猿も木から落ちる」と同じ意味を持つ表現ですね。
【例文】「河童の川流れ」と言われないよう、ミスには細心の注意を払う。 - 2.「弘法にも筆の誤り」(こうぼうにもふでのあやまり)
「名人であっても間違えたりする」という意味を持つ、「猿も木から落ちる」の同義語になります。
【例文】国語教師が漢字を書き間違えるとは、まさに「弘法にも筆の誤り」だ。 - 3.「上手の手から水が漏れる」(じょうずのてからみずがもれる)
「猿も木から落ちる」と同じく、「達人でも間違えることがある」という意味を持ちます。
【例文】「上手の手から水が漏れる」とも言うのだから、ミスをいちいち気にするな。
なお、「猿も木から落ちる」の対義語として当てはまるものは、「愚かな者であっても、たまには良い考え方をする」という意味を持つ「愚者にも一得(ぐじゃにもいっとく)」や「千慮一得(せんりょいっとく)」などが挙げられるでしょう。
余談ですが、自分の出来の良さを自慢する為のことわざとして、「猿は木から落ちない」という表現はないので、ご注意ください(笑)
さて、ここまできたら「猿も木から落ちる」の完全制覇まであと一歩です!
極めつけとして「猿も木から落ちる」の「英語訳」も知る事で、この表現のキャラを完璧に掴んでしまいましょう!
皆さんも、自分が知っている英語で思い付く表現がありませんか?
猿も木から落ちるの英語訳
英語で「猿も木から落ちる」を表現するとしたら、下記のような例が適切でしょう。
1.Homer sometimes nods.
「ホーマーでもときに居眠りをする」という意味で、ホーマーというギリシャの大詩人であっても失敗するという例えを用いた、英語ならではの「猿も木から落ちる」を意味する表現です。2.Nobody’s perfect.
「完璧な人はいない」という意味の英語表現になります。3.Everybody makes mistakes.
「誰でも失敗する」と和訳できる表現ですね。
なお、冒頭でも触れましたが、「猿も木から落ちる」には、下記に上げるような世界各国の類似表現があります。
・カンボジア「四本足の象でさえ足を滑らすことがある」
・エストニア「利口なキツネも罠に落ちる」
・メキシコ「最良の料理女も煮豆を焦がす」
・ベネゼエラ「最高の狩人から鳥が逃げる」
このように、同じようなことわざでも、その比喩表現に文化の違いが表れるのは面白いですね。
それでは最後に「まとめ」でおさらいをし、このことわざを完全にマスターしましょう!
なお、まとめの最後には、皆さんの役に立つちょっとしたオトク情報もプレゼントしてますよ♪
まとめ
いかがでしたか?「猿も木から落ちる」の意味はしっかり理解できたでしょうか?
最後に、ここまでの内容を簡単にまとめましょう。
【猿も木から落ちる】 | |
意味 | 優秀な人でも時に失敗する |
語源 | 古代中国の書物『淮南子』 |
感情 | 驚き、落胆、励まし |
類語 | 河童の川流れ |
さて、ここまでご覧いただければ分かるように、「猿も木から落ちる」ということわざは、どんな人でも経験するであろうことわざです。
簡単な仕事や慣れた作業でも、うっかりミスしてしまう事はありますよね?
とはいえ、たとえ小さな失敗であっても、ミスをしないに越したことはないでしょう。
ということで、この記事の最後に、皆さんが日常で凡ミスをしなくなる一冊をご紹介致します!
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