日常ではあまり聞きなじみのない「不言実行」という表現ですが、その正しい意味はご存じでしょうか?
実はこの四字熟語、広く知られている「有言実行」の影響でその意味を混同している方が非常に多い、要注意の表現なのです。
ということで今回は、「有言実行」との違いも比較しながら、例文や類語も参考に、詳しく&分かりやすく「不言実行」の意味を解説致します!
不言実行の意味
それでは早速、まず「不言実行」の意味を見ていきましょう。
「不言実行」の意味とは、「余計なことは口にせず、黙ってやるべき事を行うこと」という意味になります。
これは言い換えれば、「無駄口を叩かずに、愚直に黙々と実行し続ける」という言い方もできます。
なお、この「余計なこと」や「無駄口」に当たる発言とは、主に愚痴や悪口、言い訳などが該当し、あるいは、雑談や世間話、無駄なおしゃべりなどを指して使う事もあります。
要するに、「不言実行」とは、ペチャクチャと口ばかり動いて何も行動しないことや、行動はするもののグチグチと不平や不満を言いながら遂行することを戒める言葉だということです。
したがって、「不言実行」と言われる人物のイメージとしては、口数少なく無言で自分の仕事に集中し続ける、いわゆる「背中で語る」ような寡黙で親方的な職人気質の人物を想像すると分かりやすいと思います。
逆に言うと、たとえば会社の悪口や上司の陰口、仕事への不平不満ばかり口にする人は、いくら仕事を全うしていても「不言実行」とは言えません。
つまり、自分の成すべきことをやりきるのは前提で、その上でネガティブな発言や無駄なおしゃべりなどを一切しない人を「不言実行」という言葉で表現できるということです。
なお、ここまでの説明を聞いて気づかれた方もいると思いますが、そういった意味では「不言実行」という言葉は、必要以上に自己表現しないことを美徳とする日本文化が非常によく表れた四字熟語と言えるでしょう。
皆さんも、努力や善い行いなどはやたらめったらアピールするものではなく、むしろ他者から見えないところで密かに行う方がカッコよく感じますよね?(笑)
こういった価値観は欧米にないわけではないのですが、他の人種や民族と比べると、日本人は特にそのような気質が色濃く出ていると言えると思います。
実際日本には、「言わぬが花」「沈黙は金(きん)」のように無言でいることを評価する言葉が昔から存在しますし、その他にも「暗黙の了解」「以心伝心」といった言葉のように、口にせずとも意思が伝わる事を良しとする言葉も広く親しまれています。
あるいは、「言葉に出して言うより何も言わない方が伝わる」「 本当に深い気持ちは言葉では到底言い表せない」という意味を持つ、「言わぬは言うにまさる」という言葉すらあるほどです。
このような背景からも、日本には「言葉にしない」という態度に美徳を感じる感性が元から備わっており、「不言実行」という言葉もそのような価値観が反映された表現と言えそうですね。
なお、そのような非常に日本らしい「不言実行」という表現ですが、冒頭でも触れたように、普段の日常においてはそれとは反対の意味を持つ「有言実行」の方が耳にする機会は多いですよね?
これには、明治以降に欧米文化が広まったことが関係しているのですが、実はもともとは「不言実行」という四字熟語が先に存在しており、むしろ「有言実行」は「不言実行」から派生する形で後から生まれた言葉だというのは知っていましたか?
そういった背景も踏まえ、「有言実行」と「不言実行」の意味の違いを詳しく把握することもこの表現の理解をより一層深めてくれるので、後ほど「類語」の章で解説させていただければと思います。
さて、ということで、ここまでで「不言実行」の意味がおおむね理解できた後は、この言葉のニュアンスを完全にマスターするために、続いてその語源を見てみましょう!
「有言実行」よりもはるか前から日本に存在した「不言実行」には、そもそもどのような由来があったのでしょうか?
不言実行の語源
さて、「不言実行」という四字熟語にはどのような由来があるのでしょうか?
結論から言うと、「不言実行」の語源は、紀元前五世紀ごろの中国における思想家・哲学者として有名な『孔子』とその弟子たちが残したとされる書物である『論語』の中にルーツが存在しています。
『論語』の『里仁(リジン)篇』に、「不言実行」の由来とされる下記のような記述があります。
『子曰、君子欲訥於言、而敏於行。』
このままでは全く意味が分からないので、解説しますね(笑)
この漢文を訳すと、「子曰く、君子は言に訥(トツ)にして、行ないに敏(ビン)ならんと欲す」となり、これを更に現代語訳すると「孔子が言うには、君子たる者、口を重くして実践に努めるようで在りたいと望む」と訳すことができます。
これをもう少し分かりやすく言えば、「徳が高く品位のある人格者は多くを語ることなく実行するものだ」と孔子が言ったという事ですね。
つまり、「本当に優秀な人は黙って行動する」ということを謳っているこの文章が、「不言実行」の由来になっているということだったのです。
したがって、明治以降の欧米文化の流入によって生まれた言葉である「有言実行」の誕生の2,000年以上前には、すでに「不言実行」の語源が存在していたということになります。
これは言い換えれば、「不言実行」という言葉は非常に長い歴史を辿って現在まで受け継がれ続けてきた四字熟語だと言えるでしょう。
そういった意味では、「有言実行」というポッと出の新人のほうが日本で広く使われていることは、「不言実行」にとってはとても不本意で悔しい状況なのではないでしょうか(笑)
ちなみに、このように日本の四字熟語やことわざには、日本や中国に古くから伝わる書物にその語源が存在しているものも多いので、自分でも一度調べてみるととても面白いですよ。
さて、ということで、語源を把握し「不言実行」の意味が完璧に理解できたところで、続いてはこの表現がどういった時に使われるのか、例文を見ることで言葉の使い方をマスターさせましょう!
皆さんは、どのような例文が思いつくでしょうか?
不言実行の例文
「不言実行」という表現は、下記の例文のような形で使う事ができます。
- 例文1.父は「不言実行」を座右の銘とし、自分で決めた事を黙々とやり抜くタイプだった。
- 例文2.見えないところで徳を積んだり、陰で努力するような「不言実行」の人を尊敬する。
- 例文3.「不言実行」がピッタリ当てはまる同僚が会社にいるので、とても良い参考になる。
- 例文4.口数少なく与えられた仕事を徹底的に取り組む姿勢はまさに「不言実行」と言える。
- 例文5.「不言実行」だと周囲の誤解を招く可能性がある中で、それでもきっちり成果を出すあたりが流石だ。
四字熟語というのは、ポジティブ・ネガティブのどちらか一方の意味合いで使えるものと、両方の意味で使えるものがあります。
そんな中、例文を見ていただいて分かるように「不言実行」という表現は基本的にポジティブなニュアンスで使います。
確かに、言い訳したり愚痴を言って他責にするのは簡単な一方で、そのようなストレス発散や逃げのスタンスを選ばずに真摯な態度でものごとに取り組むことは、とても尊いことですよね。
ちなみに、自分の口で「不言実行」だと公言しアピールする人は、その時点で「不言実行」には当てはまらないので、皆さんもご注意ください(笑)
さて、ということで、例文を見て具体的な使い方が分かったところで、続いては実際の会話例を通して、自分自身で「不言実行」という言葉を使うイメージを養ってみましょう!
皆さんも、下記の会話例のパンダさんになりきり、〇〇の部分に入る言葉を考えてみてくださいね。
不言実行の会話例
会社の同僚であるパンダさんとヒツジさんが、仕事終わりの飲み屋で話しているシーンです。
オオカミ部長って、「不言実行」そのものって感じでカッコいいよね~。
確かにね~。ボクも、あんな風にデキるビジネスマンになりたいな。
でもさ、正直こんなブラック企業で働く以上、愚痴も言い訳も言わないなんて無理でしょ!
いや、その発想が、すでにダメダメな〇〇社員の発想だよね…。
いかがでしょうか?〇〇にはどんな言葉が入りましたか?
この〇〇に入る言葉は、『三流』『社畜』などですかね(笑)
このパンダさんのように、「不言実行」というのは、実際は「言うは易し行うは難し」ですよね(笑)
さて、ということで、パンダさん達のやり取りを見て「不言実行」という表現を実際に使うイメージがついたところで、続いてはその類語や「有言実行」との違いを知ることで、この言葉の輪郭をより鮮明にしていきましょう!
「有言実行」と「不言実行」は、具体的にどのポイントが違うか分かりますか?
不言実行の類語
それではまず、類語の紹介をさせていただきます。
「不言実行」には「訥言敏行(とつげんびんこう)」という類語があります。
これは、「徳ある人というのは、口数少なく行動は敏速である」という意味を持っています。
あるいは、冒頭でも触れた「言わぬが花」「沈黙は金(きん)」「言わぬは言うにまさる」なども「不言実行」の類語と言えるでしょう。
また、同じく冒頭の意味の説明でも触れましたが、「不言実行」の対義語には「有言実行」が当てはまります。
その「有言実行」の持つ意味とは、「口にしたことは絶対に成し遂げること」という意味ですね。
したがって、「不言実行」と「有言実行」は「必ず成果を上げる」という点では同じですが、「目標を公言するかしないか」という点で違いがあるということになります。
すなわち、「目標を口にしないで結果を出す」のが「不言実行」であり、「目標を明確に口にして結果を出す」のが「有言実行」だという事です。
なお、よくあるビジネス書などで挙げられている「有言実行」の心理的メリットとして、周囲に目標を告げることで逃げられない状況に自分を追いやることで、やる気を継続させるというものがあります。
しかし、実はこのような自己啓発や成功哲学の源流も、元を辿ればアメリカから日本に輸入されたものなので、そういった意味でも「有言実行」という考え方はどちらかと言うと欧米的な価値観と言えるでしょう。
したがって、戦後になり急速に欧米化した日本において、「有言実行」というアメリカ的な価値観が「不言実行」に代わり広く支持されたのは、納得がいくことと言えそうですね。
ちなみに、そうは言っても「有言実行」と「不言実行」は、その意味こそ相対するもの同士ですが、基本的にはどちらも非常に有益な教訓を教えてくれる四字熟語なので、その時の心境や自分の好みに応じて使い分けるのが良いのかなと思います。
なお、それとは別に、「有言実行」以外の「不言実行」の対義語として、「有口無行(ゆうこうむこう)」という四字熟語があるのは知っていましたか?
この「有口無行」の意味とは、「口先から出まかせばかり言って、実行が伴わないこと」という意味なので、こちらは「実力がない」上に「口も達者」という意味では、「有言実行」以上に「不言実行」の対義語らしい表現と言えるでしょう。
したがって、実際の日常においては、何があっても「有口無行」にだけはならないようにしたいものですね(笑)
さて、ここまで来たら「不言実行」の完全制覇まであと一歩です!
極めつけとして「不言実行」の「英語訳」も知る事で、この表現のキャラを完璧に掴んでしまいましょう!
皆さんも、自分が知っている英語で思い付く表現がありませんか?
不言実行の英語訳
英語で「不言実行」を表現するとしたら、下記のような例が適切でしょう。
1.actions, not words
2.deeds, not words
3.working in silence
4.action before words
いずれも「不言実行」と同じニュアンスを持つ英語表現ですが、3と4の方が万人受けするかもしれませんね。
それでは最後に「まとめ」でおさらいをし、このことわざを完全にマスターしましょう!
まとめ
いかがでしたか?「不言実行」の意味はしっかり理解できたでしょうか?
最後に、ここまでの内容を簡単にまとめましょう。
【不言実行】 | |
意味 | すべき事を黙々と実行する |
由来 | 孔子の論語にある一説 |
感情 | ポジティブな気持ちで使う |
類語 | 訥言敏行、言わぬが花 |
対義語 | 有口無行 |
有言実行との違い | 目標を口にするかしないか |
さて、ここまでご覧いただいた通り、「不言実行」とは黙って結果を出す日本らしい美徳を反映した言葉でした。
世間的には「有言実行」のほうがメジャーなのは、語源的に考えれば少し悲しい気もしますが、とは言え大切なのは「口にするしない」ではなく「実行できたかどうか」ですよね。
しかし、そうは言っても、私たちは人間はつい甘えが出てしまい、望む結果に辿り着けないことが多いのもまた事実です(笑)
ということで、この記事の最後に、皆さんがちょっと変わったアプローチで結果を出せるようになる一冊をご紹介させて頂きます!
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