日常でも頻繁に耳にする「適材適所」という表現ですが、その正しい意味はご存じでしょうか?
実はこの四字熟語、自分では正しく理解していると思っていても、気づかずうちに「適所適材」という類語の意味と混同することで誤用してしまっている人が意外と多い、非常に要注意の表現なのです。
また、実際の日常で「適所適材」を個人レベルでも組織レベルでも実現するためにはどうしたらいいのか?ということも気になるポイントだと思います。
ということで今回は、例文や類語なども参考にしつつ、仕事における「適所適材」の実践方法なども踏まえ、詳しく&分かりやすく「適所適材」の意味を解説いたします!
適材適所の正しい意味
それでは早速、「適材適所」の意味を見ていきましょう。
「適材適所」の意味とは、「その人物の能力・性質に当てはまる地位・任務を与えること」という意味になります。
これは別の言葉で言えば、「その人の特性にピッタリの仕事・業務を任せること」や「その人の実力に見合った役割を与えること」とも言い換えられます。
つまり、「まずは人ありき」で、その人の能力や長所が最大限発揮されるポジションに就かせる、あるいは、最も高い成果が得られるであろうタスクを任せるということですね。
なお、既にお気づきの方もいると思いますが、この「まずは人ありき」というのが冒頭でも触れた「適材適所」という言葉の隠れたポイントです。
どういうことかと言うと、いま説明した「適材適所」の意味とは逆に「適した役割・地位に、それに見合った人物を就かせる」という「まずは役割ありき」というスタンスは「適所適材」という言葉が当てはまるということです。
つまり、最初にポジションが存在しその枠に当てはまる人を選別するのは、「適材適所」ではなく「適所適材」であるという意味になります。
なお、このような「適材適所」と「適所適材」の違いは、下記のようにまとめると双方の違いがはっきりと分かると思います。
【適材適所】
「Aさんに何か仕事を任せたい」
→「〇〇が得意な彼には△△をやってもらおう」
【適所適材】
「△△という仕事を誰かにやって欲しい」
→「〇〇が得意なAさんに任せよう」
ということで、ご覧いただたように、「適材適所」も「適所適材」も結果的には同じことですが、「原因」という視点で見るとまったく違うアプローチになるので、注意が必要ということですね。
いずれにしろ、「適所適材」と比べたことで「適材適所」の意味がより鮮明になったのではないでしょうか。
なお、上記のような比較も含めて考えると、「適材適所」の持つイメージ的には「ジグソーパズル」を想像するとわかりやすいと言えるでしょう。
皆さんご存知のように、それぞれのパズルのピースの凸凹は千差万別で同じものは全くありません。
そして、「パズル」というのはまずはパズルのピースありきで、それらを上手く配置して全体として一枚の絵を完成させますよね。
そして、「適材適所」というのは、このイメージに合致する言葉と言えます。
要するに、適切なピース(人)を適切な位置(場所)に当てはめると、最終的に美しい絵が姿を表すということです。
なお、ビジネスの現場で「適材適所」を例えるなら、話し上手で明るい人は営業職、PCスキルに長けている人は事務職、数字に強い人は経理職といったように、その人材が持つ個性や能力を活かせる職に就かせることを言いますね。
したがって、特に大きい組織(パズル)であればあるほどその組み合わせは何通りにもわたるので、そういった意味では、小規模会社より大企業の方が「適材適所」の実現は難しいのかもしれません。
ちなみに、たとえば『美味しい料理を作るには「適材適所」の材料を揃えるのが大事だ』といった形で、人だけでなく物に対しても「適材適所」という表現は使うことができます。
とはいえ、基本的には「適材適所」は人に対して使うことが圧倒的に多いので、物に対して積極的に使うと下手な誤解を招く可能性もあるのでオススメはしません。
そこから考えると、「適材適所」という言葉を「適材適所」で使えるのは、人に対して用いるシーンだと言えそうです(笑)
さて、ということで、ここまでで「適材適所」の意味がおおむね理解できた後は、この言葉の意味を完全にマスターするために、続いてその語源を見てみましょう!
むしろ、「適材適所」という四字熟語は、語源を把握することで意味の理解が進むタイプの表現でもありますね。
適材適所の興味深い語源
さて、「適材適所」という四字熟語には、どのような由来があるのでしょうか?
結論から言うと、「適材適所」という言葉は、この表現に使われているそれぞれの漢字の意味を紐解くことでその由来が見えてきます。
まず、「適材適所」の「適」という漢字ですが、この漢字の持つ意味は「ふさわしい・よく当てはまる」という意味になります。
つまり、より簡単に言えば「ぴったり」ということですね。
続いて、「適材適所」の「材」という漢字ですが、これは文字通り「材料」を指し示しています。
なお、この「材料」とは、材は材でも「木材」のことを指しているので、この点はとても大切なポイントと言えるでしょう。
というのも、皆さんご存知のように、明治時代以降に西洋文化が入る以前の日本では、ほとんどの家屋には「木材」が使われていましたよね?
そして、生き物である木を切り出して作られる木材というのは、当然その形は一様に同じ物にはなりませんでした。
これは、同じ一本の木でも、切り出す部分や切り出し方によって全く違う木材に仕上がるからですね。
いまでこそ機械化が進み製材技術も進歩しましたが、当時は木材を作る専門の職人がおり、彼らはそれぞれの木の持つ個性や小さな違いなども細かく把握しながら、ひとつひとつの木材を切り出していました。
そして、当然ながらその木材を使い建物や家具を作る職人たちも、切り出された木材ひとつひとつの微妙なゆがみや形状の違いを活かしながら家づくりや作品づくりをしていたのです。
また、さらに言えば、使う木の種類によっても、硬さや色合い、経年変化のしやすさなどが違うので、その点も考慮すれば、それこそ無限に木材の組み合わせは存在します。
したがって、そういった、極めて高度な技術・知識・経験が必要とされる職人たちにとっては、それぞれの木材を最適な方法で使うことは、非常に大切な要素だったのです。
つまり、「適材適所」の「材」という漢字が木材を指している背景には、世界に誇れる木造建築文化を持つ日本らしさが垣間見えると言えるのではないでしょうか。
いかがでしょうか?
このような話を聞くと、多くの組織において「適材適所」がなかなか上手くいかないのも、すこし許されるような気がしませんか?(笑)
冗談はさておき、いずれにしろ、「適材適所」の「材」とは、このように元々は日本伝統の木組み工法の木材から転じて現在のような「人材」という意味で使われるようになったということです。
なお、最後に「適材適所」の「所」ですがこれは文字通り「場所」のことであり、現在では広く「ポジション」というようなニュアンスで「役職・仕事」という意味で使われるようになりました。
さて、ということで、語源を把握し「適材適所」の意味が完璧に理解できたところで、続いてはこの表現がどういった時に使われるのか、例文を見ることで言葉の使い方をマスターさせましょう!
皆さんは、どのような例文が思いつきますか?
適材適所の例文
「適材適所」という表現は、下記例文のような形で使う事ができます。
- 例文1.監督や上長の役目の一つには「適材適所」の采配をすることが挙げられる。
- 例文2.「適材適所」の人事を実現させるには社員一人一人の技量を見定める必要がある。
- 例文3.彼にキャッチャーをやるよう命じたのは「適材適所」であり、本人も納得している。
- 例文4.手先が器用な長男にテントの設営を手伝ってもらったのは、まさに「適材適所」だ。
- 例文5.「適材適所」と言えども、仕事をする以上ときには苦手な事もしなければいけない。
ご覧いただたように、「適材適所」という言葉は主にビジネスの現場で多く使われる表現ですが、それ以外にもスポーツ・芸術・政治など、業界問わずに何かしらの団体・チーム・組合などにおける、組織内の人の配置・配役に関わるシーンでも使われますね。
さて、ということで、例文を見て具体的な使い方が分かったところで、続いては実際の会話例を通して、自分自身で「適材適所」という言葉を使うイメージを養ってみましょう!
皆さんも、下記の会話例のパンダさんになりきり、〇〇の部分に入る言葉を考えてみてくださいね。
適材適所の会話例
ドライブ旅行していたパンダさんとヒツジさんが、交通事故にあったシーンです。
うわ~、ヘッドライト完全に壊れてる…ヒツジさんのハンドル捌きが下手だから、電柱にぶつかったりするんだよ。
そんなこと言わないでよ!そもそも、ペーパードライバーのボクに運転させるのが間違いだったんだ!
しょうがないじゃん。ボクは途中でインター寄った時に〇〇飲んじゃったんだから。
そこはせめてノンアルで我慢してよ!「適材適所」で選べば絶対パンダさんが運転手なのに…。
いかがでしょうか?〇〇にはどんな言葉が入りましたか?
この〇〇に入る言葉は、『缶ビール』などですかね(笑)
車での旅行って、運転手選びがネックになることがあったりしますよね(笑)
さて、ということで、パンダさん達のやり取りを見て「適材適所」という表現を実際に使うイメージがついた(?)ところで、続いてはその類語を知ることで、この言葉の輪郭をより鮮明にしていきましょう!
皆さんも、パッと思いつく類語がありませんか?
適材適所の類語・対義語・英語訳
「適材適所」には下記のような類語が存在します。
- 1.「量才録用」(りょうさいろくよう)
人が持つ才能をよく見てその能力を充分活かせる地位に登用すること - 2.「量才取用」(りょうさいしゅよう)
「量才録用」と同じ意味を持つ四字熟語 - 3.「黜陟幽明」(ちゅっちょくゆうめい)
功績を鑑み正しい基準で人材を登用すること - 4.「餅は餅屋」
何事においてもその専門家に任せるのが最も良いということ
なお、これら類語が存在する一方で、「適材適所」の対義語としては、下記のようなものが挙げられます。
- 1.「大器小用」(たいきしょうよう)
優れた才能の持ちながらも、低い地位にしか就けないこと - 2.「大材小用」(たいざいしょうよう)
偉大な人物につまらない仕事をさせること - 3.「驥服塩車」(きふくえんしゃ)
優れた能力を持つ人が、その能力に適さない地位にいたり、取るに足らない仕事をさせられること
こうして対義語と比べると、尚更「適材適所」の大切さが身に沁みますね(笑)
続いて、英語で「適材適所」を表現するとしたら、下記のような例が適切でしょう。
1.right person, right job
2.right man, right position
3.right people, right place
「適材適所」の「材」を「person・man・people」、「所」を「job・position・place」でそれぞれ訳した表現ですね。
さて、ここまでで「適材適所」という四字熟語の持つ意味の理解は完璧にできたと思いますが、とはいえ、言葉の意味を理解することと実際に普段の生活で活かすことは別物です。
ということで、続いては私たちの日常生活、とりわけビジネスの現場において実際に「適材適所」を活かすためにはどうしたらいいのかの整理をしてみましょう!
仕事における適材適所
さて、ここまでご覧いただいたように、「適材適所」というのは「その人の能力や性質に適した地位や任務を与えること」という意味を持ち、複数で何かしら共同作業をしたり、共通の目的を達成するためには非常に大切な考え方でしたね。
特に、仕事において「適材適所」を実現することは、会社の発展や個々の社員の成長にとっても重要なポイントになります。
とりわけ、いわゆる管理職に就く人や人事に関わる仕事に携わる人にとっては、避けては通れない話題であると言えそうです。
あるいは、社員として組織内で働くという立場で見ても、ほとんどの方が自分の能力を活かして会社で働きたいと思っているでしょうし、フリーランスで働く人で言えば社会という枠組みにおいて自分の価値を発揮することは「適材適所」を実践することと同義と言っても過言ではないでしょう。
そのような前提で考えたときに、「適材適所」を実現することは、実はこれからの時代においてはますます重要な課題になってくると言えるのです。
というのも、皆さんご存知のように、グローバル化と言われて久しい昨今の日本においては、世界各国から次々に新しい考え方や習慣が入ってくることで、人々の働く事への価値観も多様化していますよね。
そして、2020年にはコロナの影響によって、今まで当たり前とされていた勤務体制や働き方も急激に変化することを余儀なくされました。
しかも、そのような変化がある一方で、近年はIT技術の発達により、事業環境も急速に変化していく時代です。
特に、AI技術における進歩により自動化・無人化の波はいたるところに影響を及ぼし、それにより人々に求められるスキルも様変わりしつつありますよね。
また、日本は現在人手不足も大きな課題になっており、少子高齢化によって労働人口が減少していく中、企業にとって優秀な人材の確保は最重要の問題と言っても過言ではないでしょう。
つまり、このような状況下では、社会の急激な変化に対応するためにも、今まで以上にひとりひとりの社員がその人自身の持つ才能を発揮する必要があり、それはすなわち、個人においても組織においても「適材適所」を実現することが非常に重要になってくるのです。
では、そのような状況下において、私たちはどのようにして仕事を選ぶ必要があり、またどのようにして組織作りをしていけばいいのでしょうか?
個人も組織も活かす適材適所とは?
まず、仕事をする人材側の立場で話を整理してみましょう。
先ほども述べたように、AIの普及によりいわゆる単純労働はどんどん機械化されるこれからの時代においては、自分の個性やアイデンティティを発揮していかなければ仕事が無くなる可能性が高いと言えるでしょう。
それは会社員であれ、フリーランスや自営業であれ、変わりません。
そういった意味では、「社会」という枠組みの中で自分を「適材適所」で活かす必要があると言えるでしょう。
そして、そのために必要なことは何かと言うと、それは自分の事をしっかりと理解すること、すなわち「自己理解」を徹底することであると言えるのではないでしょうか。
つまり、「自分の強み・好きなこと・やりたいこと」をしっかりと自分で理解したうえで、適した職場や仕事を選ぶ必要があるという事です。
むしろ、正しく自己理解が出来ていない状況で仕事を探そうとしても、終わりのない「自分探し」や、生活費を稼ぐ為だけにやりたくもない「ライスワーク」をすることになりかねません。
なお、この点に関しては、自己理解を進め自分にピッタリの仕事を見つけるのに非常に優れた良書があるので、この記事の最後にまとめて紹介させていただきますね。
さて、続いて、組織運営を担う側でこれからの時代に「適材適所」を実現する方法を紐解いてみましょう。
先ほども述べたように、社員を雇い彼らと共に事業を遂行する立場においても、「適材適所」は重要な課題であり、社会構造が大きく変化するこれからの時代は尚更その必要性は高まります。
そんな中、組織において「適材適所」を実現することは、会社において多くのメリットをもたらします。
そのメリットとは、「生産性の向上」「業務効率のアップ」「離職率の低下」「社員の満足度向上」「組織の活性化」「売上・利益の上昇」など、挙げればキリがありません。
では、そのようなメリットをもたらしてくれるような優れた「適材適所」を行うには、どのような手法があるのでしょうか?
その手段は多岐にわたりますが、簡単にまとめると下記のようなものが当てはまります。
- ・社員に対し適性検査(ストレス耐性・能力・性格)を実施する
- ・様々な分野や職種の仕事を習熟するまで任せてみる
- ・定期的に人事担当者と上長の双方が同席した個人面談を社員と行う
- ・会社内の人事評価・考課制度を見直す、再構築する
- ・マインドセットによる目的のすり合わせを社員一人一人とする
- ・会社のビジョンをしっかりと共有し、社員個々のビジョンと合致させる
- ・社員一人一人のジョブ・クラフティングの実践によりモチベーションを上げる
以上のような事例が、理想的な「適材適所」を実現する上での主な手段と言えますが、もちろん会社の規模や事業内容や組織構成によっては、これら以外の方法を取ることもできます。
そういった意味でも、上記に列挙したものはあくまで一例に過ぎないので、組織の人材における問題解決についてもっと詳しく知りたいという方は、最後のまとめで紹介する本を手に取っていただければと思います。
それでは最後に「まとめ」でおさらいをし、この四字熟語を完全にマスターしましょう!
まとめ
いかがでしたか?「適材適所」の意味はしっかり理解できたでしょうか?
最後に、ここまでの内容を簡単にまとめましょう。
【適材適所】 | |
意味 | 能力や性質に適した地位や任務を与える |
由来 | 適=ぴったり、材=木材、所=場所 |
イメージ | ジグソーパズル |
類語 | 量才録用、黜陟幽明 |
対義語 | 大器小用、驥服塩車 |
英語訳 | right person, right job |
さて、ここまでご覧いただいた通り、「適材適所」とは働く側にも雇う側にとっても、非常に大切な考え方でした。
特に、変化が激しいこれからの時代には、自分の持ち味を活かせる仕事をすることが今まで以上に大切であると同時に、個人のパーソナリティを重視した組織づくりをすることが必須になっていきます。
ということで、この記事の最後に、働く側も働き手を活かす側も、双方ともに「適材適所」を実現できる良書を二冊をご紹介させて頂きます!
この本を読むことで、あなたもきっと、時代の変化に左右されない充実した働き方が理解できますよ!
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