日本で一・二を争うほどメジャーであると言っても過言ではない「弱肉強食」という表現ですが、その正しい意味はご存じでしょうか?
実はこの四字熟語、厳密には二つの異なる意味を持って持っているのですが、それを知らずに両者を混同している方も多い、意外と要注意な表現なんです。
ということで今回は、例文や類語なども参考に、詳しく&分かりやすく「弱肉強食」の意味を解説いたします!
弱肉強食の意味
それでは早速、「弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)」の意味を見ていきましょう。
冒頭でも触れましたが、「弱肉強食」の意味は二つあります。
まず、「弱肉強食」の一つ目の意味とは、「弱い者が強い者の餌食になること」という意味になります。
これをもう少し別の言葉で言えば、「強者によって弱者が食べられ犠牲になること」とも言い換えられますね。
つまり、両者に「食べる・食べられる」という捕食関係があることで、捕食される立場の者が食料として殺されてしまうということです。
こちら意味での「弱肉強食」の具体的な代表例は、ジャングルの草食動物と肉食動物の関係が最もよく用いられる事例でしょう。
とりわけ、その中でも「シマウマを食べるライオン」という描写が一番分かりやすい象徴的なイメージと言えますね。
皆さんご存じの通り、シマウマなどの草食動物とライオンなどの肉食動物は、食物連鎖の関係性においては「食べる」「食べられる」という間柄なので、そのような構図が「弱肉強食」の一つ目の意味になります。
続いて、「弱肉強食」の持つ二つ目の意味ですが、その意味とは「強い者が弱い者を滅ぼし繁栄すること」というものになります。
こちらをもう少し別の言葉で言えば、「繁栄のために強者が弱者を滅ぼす」と言い換えられるでしょう。
なお、一見すると、この二つ目の意味も最初に説明した一つ目の意味と同じように思われますが、厳密には微妙に違いがあります。
すでにお気づきの方もいると思いますが、二つの意味の違いのポイントは、「餌食」と「繁栄」というキーワードにありますね。
つまり、一つ目の意味の「弱者が強者の餌食になること」の方は「食糧として食べられる」という意味が強く、必ずしもそれにより強者が繁栄するというニュアンスは含まれていません。
その一方で、二つ目の意味の「強者が弱者を滅ぼし繁栄すること」という意味では、逆に「食糧となるかどうか」は触れておらず、「栄えること」が強調されていますね。
つまり、このような違いをまとめるの下記のように整理できます。
①弱者が強者の餌食になること
=両者の捕食関係のことであり、引いては食物連鎖のこと
②強者が弱者を滅ぼし繁栄すること
=弱者の全滅によって繁栄をするという点で食物連鎖ではない
この違いをもう少し分かりやすくいえば、「食物連鎖」の関係性においては、強者の立場にあるものは餌となる種を滅ぼすことは無いという観点が大切だということです。
どういうことかと言うと、皆さんご存知の通り、自然界の食物連鎖というのは微妙な相関関係でそのバランスが成り立っていますよね?
そんな中、何かの生物が全滅するとその一部の崩壊により、それが引き金となり生態系全体に多大なる影響を及ぼします。
そして、その絶滅した種が自分たちの種の餌となる種であれば、その次に真っ先に絶滅するのは食べるものを失った自分たちの種ということになります。
そういった意味では、自然界においてはいくら自分の食べ物となる生物とはいえ、全滅させては自身の種の生存も危ぶまれるような関係性になっています。
つまり、「強者が弱者を滅ぼし繁栄すること」という二つ目の意味での「弱肉強食」は、自然界における食物連鎖には当てはまらないのです。
では、具体的にどのような状況で二つ目の意味で使えるのかと言うと、それは主に「人間関係」や「資本主義社会」といった、人にまつわる関係性において用いられます。
たとえば、同じ業界で争っている企業同士のうち、一方の企業が潰れてしまっても、それにより残った方の企業の存続も危ぶまれることはないですよね。
そういった意味では、この企業同士は「食べる食べられる」という食物連鎖における上下関係ではありません。
むしろ、同じ食糧(=顧客)を奪い合った結果、一方が負けもう一方が勝つという構図が見て取れますね。
つまり、一つ目の意味も二つ目の意味も、「強者が弱者に勝つ」という点は同じですが、一方は「強者の食糧となって弱者が負ける」という関係ですが、もう一方は「同じ食糧の獲り合いにより弱者が負ける」ということです。
いかがでしょうか?
このように整理すると、二つの意味のニュアンスの違いが鮮明になりましたよね?
なお、私たちの日常会話において「弱肉強食」という言葉を使うときの具体的な言い回しや状況は、実際の例文を見ると理解できるので、後程まとめて紹介させていただきますね。
さて、ということで、ここまでで「弱肉強食」の意味がおおむね理解できた後は、この言葉の意味を完全にマスターするために、続いてその語源を見てみましょう!
むしろ、この四字熟語はしっかりと語源を把握することで、より意味の理解が進むタイプの表現でもあります。
弱肉強食の語源
さて、「弱肉強食」という四字熟語には、どのような由来があるのでしょうか?
結論から言うと、「弱肉強食」は七世紀頃の唐時代の中国で活躍した文人である『韓愈(かんゆ)』の作品である『送浮屠文暢師序』が由来とされています。
この作品の中で、僧である『文暢(ぶんちょう)』という人物が旅立つ際に韓愈が彼に対して送った文に、「弱之肉、彊之食」という語句が存在します。
そして、このフレーズの持つ意味こそ、「弱い者の肉は、強い者の食物である」という意味であり、すなわち現代における「弱肉強食」という四字熟語の原点にあたる表現と言えるでしょう。
つまり、「弱肉強食」のもともとの意味は、冒頭で説明した一つ目の意味である「弱者が強者の餌食になること」というものだったのです。
したがって、この事から、二つ目の意味である「強者が弱者を滅ぼし繁栄すること」という意味は、一つ目の意味から派生する形で生まれた意味と言えそうですね。
さて、ということで、語源を把握し「弱肉強食」の意味が完璧に理解できたところで、続いてはこの表現がどういった時に使われるのか、例文を見ることで言葉の使い方をマスターさせましょう!
ここまでの説明を聞いた皆さんは、どのような例文が思いつきますか?
弱肉強食の例文
「弱肉強食」という表現は、下記例文のような形で使う事ができます。
- 例文1.誰もが認めるように、「弱肉強食」は自然の摂理である。
- 例文2.サメが自分より小さい魚を食べることはまさに「弱肉強食」である。
- 例文3.地球上の生物たちは「弱肉強食」を生き抜くために進化・成長する。
- 例文4.自由競争を促す資本主義を採用する現代社会は「弱肉強食」が基本原理だ。
- 例文5.企業の吸収合併が増加する近年は、より厳しい「弱肉強食」の時代になった。
- 例文6.先住民族を虐殺しその土地を支配してきた歴史は、人類における「弱肉強食」だろう。
ご覧いただいたように、例文1~3は一つ目の「弱者が強者の餌食になること」という意味で「弱肉強食」が使われており、一方で例文4~6は「強者が弱者を滅ぼし繁栄すること」という二つ目の意味で使われていますね。
意味の説明の際にも触れましたが、こうして実際の例文を見るとどちらの意味で「弱肉強食」で使われているかが分かりやすいですね。
さて、ということで、例文を見て「弱肉強食」の具体的な使い方が分かったところで、続いては、その類語を知ることで、この言葉の輪郭をより鮮明にしていきましょう!
皆さんも、パッと思いつく類語がありませんか?
弱肉強食の類語
「弱肉強食」には、下記のような類語が存在します。
- 1.「強食弱肉」
弱者の犠牲によって、その上に存在する強者が繁栄すること - 2.「優勝劣敗」
優れているものが勝ち、劣っているものは敗れるという原理
さて、ここまで来たら「弱肉強食」の完全制覇まであと一歩です!
極めつけとして「弱肉強食」の「英語訳」も知る事で、この表現のキャラを完璧に掴んでしまいましょう!
皆さんも、自分が知っている英語で思い付く表現がありませんか?
弱肉強食の英語訳
英語で「弱肉強食」を表現するとしたら、下記のような例が適切でしょう。
1. the law of the jungle
「ジャングルの掟」と直訳できる、「弱肉強食」の英語訳です。2.survival of the fittest
「強いものが生き残る」という意味ですね。
いずれの表現も難しい単語は使われていませんが、英語に触れる機会が普段ない方には馴染みのない表現だったかもしれませんね。
それでは最後に「まとめ」でおさらいをし、この四字熟語を完全にマスターしましょう!
まとめ
いかがでしたか?「弱肉強食」の意味はしっかり理解できたでしょうか?
最後に、ここまでの内容を簡単にまとめましょう。
【弱肉強食】 | |
意味 | ①弱者が強者の餌食になること |
②強者が弱者を滅ぼし繁栄すること | |
由来 | 『韓愈』の『送浮屠文暢師序』 |
類語 | 強食弱肉・優勝劣敗 |
英語訳 | the law of the jungle |
ということで、ここまでご覧いただたように、強者が弱者に勝つことを「弱肉強食」と表現できます。
そのような競争的な価値観に対しては、向き不向きや好き嫌いはあるかと思いますが、やはり現代社会は「弱肉強食」という一面があることは否めませんね。
ということで、この記事の最後に、皆さんにおすすめの「弱肉強食」に関する良書をご紹介させていただきます!
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